私は牛である。柏市にいるたった一頭の牛である。ここは中原で、光ケ丘中学の真ん前の斎藤牧場である。かつてはホルスタイン種の仲間が100頭もいて、いつも2、30頭の子牛がモウモウ、従業員が6人も働らいていて、1日1300リットルほど搾乳し、金町の森永牛乳に運んでいたんだよ。

 牧場主、私の飼い主の斎藤慎一さん(82歳)が昭和25年に、この牧場を始めたときは柏市には20いくつもの牧場があったんさ、いまはゼロ。斎藤さんは8年前にやめたけれど、小さかった私だけを飼い続けてくれたのよ。物好きな人間様がときどき覗くけれど、たまには仲間に会いたいよ。 

 ここは4.8ヘクタールという広さ。斎藤さんの奥さんは、昔流に全部では7町歩というんだ。見てごらんよ。一メートルを越す、伸び放題の、草いきれでむせるような、懐かしい牧草地が広がっているだろう。牧草という粗飼料づくりこそ大切という斎藤さんの思いが込められていたんだ。もう住宅に囲まれてしまっているけれど、さびしいよね。やるせないよね。「斎藤牧場の緑と環境を考える会」というグループや近隣市民が市に牧場の緑の保存運動を続けてきた。そのため市でも防災機能を備えた広場や高齢化社会に対応した「ふれあい拠点」にすることにしたそうだ。それはいいさ、でも私はどうなるのか。

 会員が150人という「緑と環境を考える会」では、牧場で使っていたフォードのトラクターで耕耘し、1000坪にソバを蒔き、ヒマワリを2~3000坪ほど育てているようだ。それでもデッカイ牧場の、ほんの一部分に過ぎないさ。第3土曜の午前中には、みんな集まってにぎやかに百姓仕事をしている。楽しそうな声が風に乗って聞こえて来るよ。散歩がてら見学に来るといいよ。

 くっついて、コナラなどの雑木林がある。昔の薪炭の供給地の面影が残っている。市がまとめてめんどうを見てもらいたいね。

 平成17年に柏市の防災公園になった。牛はもういない。

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